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ウォーゲーム、シミュレーションゲームのあれこれ


by たかさわ

1980年5月に合衆国陸軍がフルダ周辺を舞台にした兵棋演習をおこない、そこにジェームズ・F・ダニガンが参加している、という記事です。非常に興味深い内容です。さっそくTwitterにウォーゲーマーの反応がありました。





セントラル・フロント・シリーズ、出生の秘密?_e0120077_21470346.jpg

実際、Fifth Corpsがこの演習の影響で生まれたなら面白いと思いまして、当時のS&T誌を何点か漁ってみました。結局、参考になったのは77、80、81号の3冊。Fifth Corpsが掲載されるのは82号です。

The Central Front on S&T 77

まず77号の「読者のみなさん、こんなゲームはどうでしょう」のコーナー(仮称)に、連結可能なクワドリゲーム4作、という企画で「The Central Front」が掲載されています。大隊規模で4作のタイトルは次のとおり。

  • Kassel: the Border Battle
  • The Battle for Schweinfurt
  • The Siege of Frankfurt
  • Through the Westerwald

The Central Front Project on S&T 80

80号では「77号のThe Central Frontは非常に高得点だった」としつつ、「4km/ヘクスならフォリオマップ20枚でバルト海からオーストリアまでをカバーできる」、「フリクション・ポイントとセグメンテッド・プレイヤー・フェイズを使う新システム」などと、プロジェクトが大きく膨らんでいることが伝えられます。

Fifth Corps on S&T 81

そして81号にFifth Corpsの製作中のマップ画像。82号に「Fifth Corps」が掲載され、それとあわせてシリーズ第2作の「Hof Gap」を出版する旨が書かれています。書いているのはダニガンではなく、共同でデザインにあたったJohn H Butterfieldです。

巻頭の次号予告によれば「1980年11月14日までに82号が届かなかったら連絡ください」とのことですので、この81号が出たのはその2か月前の9月ごろ。冒頭に紹介した兵棋演習は79号が出版されたころの話で、80号が出るまでに大幅な方針変更になったことになります。

この兵棋演習がCentral Front Projectの方向性を大きく変えた、と考えていいのではないかなぁ。というか、その方が面白いのではありませんか。

# by gameape | 2019-12-23 22:46 | 考えごと

Table Battlesの楽しみ方

Table Battlesの楽しみ方_e0120077_15383564.jpg

Table Battlesの拡張4作目を入手しました。馴染みのない用語や地名ばかりなので、まずは基本的なことだけを、Googleに色々教えてもらいます。

  • The English Civil War = イングランド内戦
  • Edgehill = エッジヒル
  • Newbury= ニューベリー
  • Naseby= ネイズビー
  • Tippermuir = ティパミュア
  • Auldearn= オールダーン
  • Royalist = 王党派
  • Parliamentarian = 議会派
  • Covenanter = 盟約者

ニューベリーは第1次と第2次があって、シナリオは計6本。時期は1642年から1645年。三十年戦争(と八十年戦争も?)を終わらせる交渉が続いていた時期でしょうか。先日入手した「Westphalia」にイギリスが出てこないのは、なるほどこの時期に内戦をしていたからか。

Table Battles Expansion #4: The English Civil War

どのシナリオをプレイするか迷いましたが、新しいルール「Tactical Victory」を試せるといいなと思い「エッジヒル」を選択。従来のシナリオと違い、敵に一定数以上のヒットを与えるとゲームに勝利できる、というのが「Tactical Victory」です。とはいえ、今回のプレイ(2回)では、どちらも王党派がモラルで勝ちを収めてしまいした。

Table Battlesは題材についての知識がほとんどない状態で、次のような順番で味わっていくのが面白いと思っています。

  • まずは超基本的な用語のざっくりした意味と読み方だけを調べる(この記事の冒頭に書いたように)
  • 何度かプレイしてみる
  • プレイしたシナリオの、実際の戦いにおける配置、布陣を調べる
  • 実際の配置に似せて並べてみる
  • 戦いの展開や背景などを調べて、Table Battlesがそれをどのように描いているかを想像する

Table Battles Expansion #4: The English Civil War

Table Battlesはカードをきっちりとつめて配置すれば、ハーフマップぐらいのテーブルでプレイできます。でも、少し広め(フルマップか、もう少し大きいぐらい)のテーブルを使うと、カードの向きや間隔をいろいろ調整して「それっぽい」見た目を作り出せるようになります。

Table Battlesは、マッチ棒のような細長いスティックがチャーミングですが、これを広めのテーブルに配置して眺めると、プレイしなくても楽しいぐらいグッドルッキングなのであります。ウォーゲームの見た目は大事です。

# by gameape | 2019-12-21 15:58 | ソロプレイ
蝶よ花よとウォーゲーム #wgac2019_e0120077_22360941.jpg


これは「War-Gamers Advent Calendar 2019」の12月6日分です。ウォーゲームは「蝶よ花よ」とプレイして楽しいときもあるよ、という話。


「あの子は蝶よ花よと育てられまして」などと言うことがありますが、ウォーゲームでも「蝶よ花よとプレイする」というのがあると思っています。

ルールの記述が甘い、矛盾する項目がある、ルールブックの構成が良くない、システム自体に穴がある、素直に勝利条件を目指すと微妙な展開になる。そういう製品にやさしく丁寧に時間や労力を投じて、「作者はこう思い描いたんじゃないかな」なプレイを探る。そういう態度を指しているつもりです。

対義語は「象が踏んでも壊れない」でいかがでしょう。意味が分からない若いアナタは、おじいさんに尋ねてみてください。ウォーゲームはルールブックのとおりにプレイして、ガッツリと勝利条件の達成を目指せるものであってほしい。象が踏んでも壊れないぐらいに、しっかりとデベロップとプレイテストと校正を。そんな感じです。

この「蝶花」(ちょうはな)と「象踏」(ぞうふみ)。あの人はこっちでこの人はこっち、と単純に分類できるものではありません。その日の気分によって変わることもあれば、「このゲームは蝶花であのゲームは象踏だな」とか、「来週あの人とこのゲームをプレイするなら象踏で」みたいなこともあるはずです。

当然、蝶花と象踏で優劣もありません。僕はその昔、蝶花な皆さまを見て、「あの人たちが長期的にはウォーゲームの体力を弱めてる」などと思ったこともありましたが、現在は蝶花と象踏を行ったり来たりしてウォーゲームを楽しんでいます。

今年(2019年)を振り返ってみると、蝶花方面が昨年より充実していました。昨年までは「象踏でプレイしてうまく動かなければ、さっさと次のゲームに行こう。人生は短いよ」の傾向が強かったです。関係ないと思いますが、僕は来年、ウォーゲームを始めてから40年です。

Canadian Crucible

2019年に蝶よ花よとプレイしたゲーム、その1は「Tactical Combat Series」(TCS)です。ヒストリカルなマップとユニットでプレイする、高低差やLOSや射程のある戦術ゲーム。OPシートと呼ばれる紙面に図と人間語(0600時にマールナッハを攻撃せよ、など)で命令を書き、たとえ自軍が不利になることが明白であっても、ユニットを命令に従って行動させねばなりません。

Canadian Crucible

命令の書き方や実行のさせ方は規定されておらず、ルールに書いてないことはやってよしとしたときと、蝶よ花よとプレイしたときとでは、随分展開が違うはずです。合衆国陸軍のフィールド・マニュアルを参考書にすると、プレイがぐっと面白くなりました。

NATO Division Commander

蝶よ花よ、その2は「NATO Division Commander」です。ずっと欲しかったのですが、eBayで良い出会いがありました。ロールプレイングゲームのようにゲームマスター(コントローラー、と呼びます)がプレイヤーから情報を隠してプレイします。箱は分厚くてコマも多いですが、実際にはハーフマップに片側100コマ弱、みたいなシナリオが多いです。

NATO Division Commander

プレイヤーは師団長として自分の体力と相談しながら、情報収集と部隊編成と前線指揮のそれぞれに、時間をどれだけ割り当てるかを考えます。ユニットの移動はNATOまたはワルシャワ条約機構のドクトリンに従わねばならず、かといってそのドクトリンは大まかにしか説明されていないので、蝶よ花よと育てる気持ちが有効です。ルールブックにあやしい部分が結構ありはしますが、蝶花モードで乗り切る所存。

Flashpoint: Golan

そして、現在まさに蝶よ花よとプレイしているのが、その3の「Flashpoint: Golan」です。1ターンが1日、1ヘクスが4kmで、大隊から旅団規模が師団単位のチットプルで活性化。ZOCあり、メイアタック、戦力比CRTのオーソドックスな作戦級ゲームに見せかけて、砲兵と航空機に弾道ミサイルと巡航ミサイルが入り混じる壮絶な臨機射撃合戦。これはSF(サイエンス・フィクションです、念のため)なのか、はたまたスコード・リーダーの50年後の姿なのか。

Flashpoint: Golan

ルールブックからは、明確でわかりやすいルールを書こう、という気持ちが感じられると思うものの、結果的には読みたい事柄を見つけにくかったり、説明が不足していたり、明らかに間違えがあったりで、まずは時間をかけてルールを読み解いたり、ルールブック自体に慣れたりする必要があります。いまは蝶花ですが、慣れてしまえば象踏に移行するのかもしれません。

年末にかけて「Death Valley」をプレイしたいと思っておりまして、これが蝶花物件その4になるかもしれません。でも、シリーズ前作の「Twin Peaks」では途中で冷めてしまったので、今回も同じ道をたどるのかも。それはそれで楽しいのがウォーゲーム、ということにします。

最後に、アドベントカレンダーのページに書いた「愛は地球を救う」についての言い訳を。

あれを書いた時点では、「蝶花は愛のたまもの」と思っていました。間違ってますね、お恥ずかしい。蝶花と象踏と愛の多寡はまったく無関係です。愛ゆえの象踏もあるだろうし、愛がなくても蝶花はできる。さらに、愛があるから良いわけでも、愛がないから悪いわけでもないので、そこんとこヨロシクお願いいたします。

ウォーゲームが僕を救ってくれているのは間違いありません。ピース。


# by gameape | 2019-12-06 00:02 | 考えごと

この記事の主である「TOROさん」にインタビューしました。

小さなものであるとはいえ、1日に4タイトルのウォーゲームを計5回もプレイするというのは、「インストはしない、されない、が原則」だの、「同時に頭に置いておけるルールはせいぜい3タイトル」だのと言っている僕からすると、実現が大変に難しそうな体験です。

一体どうやればそんなことができるんだろう。そんなことをする人たちはどんなことを考えて、どんな準備をしてゲーム会に臨むんだろう。楽しそうだぞ、うらやましいぞ、などと考えて質問を送ったところ、とても丁寧にお答えいただきました。やったね、聞いてみるもんだ。

1日にウォーゲームを4タイトルもプレイした人にインタビューしてみた_e0120077_22105588.jpg

以下、赤い文字は僕、緑の文字はTOROさんです。

開始時刻と終了時刻を教えてください。

9時から午後5時です。夜会もイベントのひとつなので、午後9時までプレイ可能ですが、5時で締めています。

4タイトル、5ゲームがプレイされたとのことですが、それぞれのゲームが何時ごろ始まって、何時ごろ終わったかを教えてください。

ブログに記載の順番でいくと以下のような感じかと。
  • Paris Deception:10:00〜11:00
  • 1940 Battle of Britain:11:00〜12:00
  • The Rise of Blitzkrieg(2回):12:30〜15:00
  • Breakout: First Panzer Army:15:00〜16:45

プレイするゲームを決めたのはいつですか?

一部のみですが11月初かと。
残りはとりあえずこれ持って行きます…くらいの決め方です。

コマ切りなど、コンポーネント方面のプレイ準備は事前に済んでいましたか?

最近の指抜き仕様のタイトルはその場で、ということも。それ以外は事前に触りだけでもプレイしていることが多いので準備しています。

ルールは双方が事前に読んでいましたか?そうでない場合、どのようにルール説明などをしましたか?(読んできた方が口伝、当日同時に読む、など)

いろいろですが、拙が持ち込む場合(=既に販売されているもの)は読んでいます。とはいえ慣熟以前の場合はそもそも相手が和訳した本人なのでwその場でタブレットか原文を読まれています。初物の場合は当日口頭インストとなりますがそもそも試食プレイと理解の上ですのでプレイが中断しようが気にせずルールの確認/咀嚼も含めて楽しんでいます。

N黒さんのインストでうまいなーと思うのは、ひとまずプレイできる最小限の情報だけを提示して“とりあえず初めてみましょう”というところですね。
プレイ開始までの時間が短いのはプレイのモチベーション維持の意味では非常に有効だと思います。
(拙個人は長いインストでも困らないのですがw)

The Rise of Blitzkrieg以外はすべて途中終了とのことですが、途中終了する方法というか、基準というか、または上手に途中終了するコツみたいなものはありますでしょうか。

以下でしょうか。
  • ゲーム的に運用できるルールは全て使ってみた
  • ゲーム上のハイライトがなんとなく見えた
  • ゲーム全体の展開(どこをどう攻めてとかではなくこれは機動戦になるなとか激しい砲爆撃はキーだよね的な)が見えた
  • とりあえずこのままのプレイはキビしそう(ただし"ソッ閉じ"はせず感想戦で改善点等をいろいろ話します、他社のゲームでも)
  • そろそろお昼(爆

むー、1時間でルール説明からそこまで行けるのはスゴいことなんじゃないでしょうか。僕はおそらく無理です(「そろそろお昼」を除く)。

競技終了のコツですが、試食会という相互認識の元なので事前にお任せしますというお断りをいれて相手に委ねてます。
(個人的にはソロPのしすぎで決着付いてても続けてしまいそうなので…汗)
多分そのあたりは相手がそうした嗅覚に優れたN黒さんなので…というのもあるかと思います。

インタビューは以上です。お答えくださったTOROさん、どうもありがとうございます。自分が同じようにできるかどうかはわかりませんが、とても刺激的で、面白いお話を伺うことができて大変に満足しています。

# by gameape | 2019-12-03 22:18 | 考えごと
おおらかにプレイしたい空中戦ゲーム_e0120077_22470663.jpg

昨年(2018年)、Hollandspieleが年末セールの景品として配布した「Absolutely Aces」です。カードにはマヌーバーの名称が書かれていて、「シザース」「ブレイク」「急降下(Swoop)」「ロール」「上昇(Climb)」がそれぞれ2枚ずつあります。それに「エース」と「ジョーカー」を1枚ずつ加えて、カードは全部で12枚。

マヌーバーごとにブロックできるマヌーバーが決まっています。例えば「上昇」は「上昇」と「シザース」をブロックして、「ロール」と「上昇」にブロックされます。相手が出したマヌーバーをブロックできなければ、カードに書かれた数字を相手が得点し、15ポイントを先取した方が勝ちです。

Absolutely Aces

冒頭の画像のように、カードを相手に隠して持つのはゲーム開始時だけで、その後はすべてのカードを表にしてプレイします。まずは相手が出したカードをブロックするカードを、そして可能なら相手にブロックされない、または、より将来において自分が有利になるカードを、という思考になると思います。

どのカードがどこにあるかが完全にわかっていますので、その気になればゲーム終了までを完全に読み切ることも可能です。残念なことに、僕はせいぜい2手か3手ぐらい先まで考えたところで息切れしてしまいますが。

Absolutely Aces

例えばこの局面。相手がエースをプレイした後で、手前側に座っているこちらの手番です。青字がこちらの、赤字が相手プレイヤーの出すカード。

  • ロールシザース 上昇ロールシザース上昇ロール (無限ループなのか?)
  • ロールのペアシザース上昇上昇エースブレイクブロックできず
  • 上昇上昇ロールシザース 上昇上昇ロールブロックできず
  • ロールシザース 上昇上昇ロールブロックできず

ソロプレイであれば、とりあえず盤面を撮影してから、カードを実際にあれこれ動かして展開を試して、考え終えてから元の盤面に戻すことができます。しかし、対戦中に頭の中だけで考えるとしたら、相当に長い時間を使ってしまうはず。

30秒程度の時間制限を設けるとか、お互い適当な気持ちで臨むなど、おおらかな対戦が楽しいのではないかと思います。バーカウンターでお酒と乾き物を横に置いて、とかがいいんじゃないでしょうか。

# by gameape | 2019-11-28 22:13 | ソロプレイ