戦争指揮官リンカーン - 内田 義雄
2007年 06月 02日
ブッシュ現大統領(2007年6月2日現在)とリンカーンを比較する記述をわずらわしく感じるときがあるものの、南北戦争全体の流れをサクっと読める本が原稿商品であるところが何よりも素敵である。リンカーンと将軍達との電信によるやり取りを中心に据えている視点は僕とって斬新であり、電信の文面から伝わる臨場感や緊張感をとても興味深く味わうことができた。
また、電信の重要性と、敵の電信を妨害する手段としての鉄道破壊について知ることができた。Lee vs GrantやGCACWにおいて、鉄道の破壊が勝利条件として位置づけられ、破壊の程度のランク付けがなされているのは、鉄道そのものの破壊と、鉄道に付随する通信インフラの破壊とを分けているということなのだろう。
とはいえ、この本を読むだけでは述べられるさまざまな会戦や戦役の位置関係をつかむことが難しいのではないかとも思った。特に、地図が少し分かりにくいのではないかと感じる。地図をもっと大きくしたり、その地図がアメリカのどの部分を切り出しているのかなどを示すことで、もう少しわかりやすくなるのではないかと思う。
なお、88ページから始まる「ポトマック軍新司令官ジョージ・マクレラン」において、「7月」と書かれる日付が「4月」となっているように思われる箇所がいくつかある。1861年4月に北軍が敗走して首都ワシントンに逃げ込んだり、マクレランがマクダウェルに替わってポトマック軍司令官になったりしたので、かなりビックリした。