人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ウォーゲーム、シミュレーションゲームのあれこれ


by たかさわ

ベル・ボイド

YSGAのブログで紹介されていた「アメリカのジャンヌ・ダルクたち」という本を読んだ。
南北戦争中、及びその前後における、何人かの女性の生き方を綴った本である。
筆者さんの意図するところではないかもしれないが、性別のことよりも、南北戦争に関する記述に惹かれて購入してしまった。



全体にあっさりした内容ではあるものの、あちこちに見られる南北戦争に関する記述は、期待に違わずとても興味深く読むことができた。
とりわけ面白かったのは、南軍のスパイ、ベル・ボイドに関する記述である。
  • ボイドはバージニア州(南北戦争の途中でウェスト・バージニア州になる)のマーティンズバーグで生まれた。
  • 1861年7月4日に北軍兵士を撃ち殺した彼女は、フロント・ロイヤルに引越して南軍のためのスパイ活動を始める。
  • 1862年5月中旬には、北軍の中尉に取り入ってウィンチェスターに侵入、そこで得た情報を南軍のジャクソンやアシュビーに送っている。
  • 送られた情報の中には、シェナンドア渓谷にバンクス、ホワイト、シールズ、ギアリー、フリーモントが集結しつつある、というものもあった。
登場する地名は、いずれもStonewall in the Valleyのマップに収められた、僕にとってはなじみのあるものである。
Stonewall in the Valley - Martinsburg
マーティンズバーグ (SIV N4317)
南軍にここを取られると、北軍はかなりきつい。

Stonewall in the Valley - Front Royal
フロント・ロイヤル (SIV M4615)
北軍の重要な目標のひとつだけれど、川が増水すると孤立するので注意が必要。

Stonewall in the Valley - Winchester
ウィンチェスター (SIV N3333)
ゲームのヘソとでも言うべき町。序盤にここを奪取できないなら、北軍は投了してよいかもしれない。

人名についても、見覚えのあるものばかり。
ホワイトとゲアリーを除く5人はStonewall in the Valleyのコマになっている。
ホワイトはHere Come The Rebels!の、ハーパーズ・フェリーの守備隊の1個を率いている。
GearyはStonewall's Last Battle (1863年4月)に師団長として登場する。

さらに、北軍がジャクソンに対して集結を始めた1862年5月20日過ぎというのは、Stonewall in the Valleyのシナリオ「ウィンチェスター」が扱う時期そのものである。
このシナリオにおいて、北軍の増援(フリーモントやシールズ)が主戦場に到着するまでに南軍がある程度の時間を持てるのは、ベル・ボイドのおかげなのかもしれない。

GCACWシリーズの他に思い当たったのは「Blue vs Gray」だ。
このゲームの南軍のカードに「La Belle Rebelle」というのがあり、これはボイドのスパイ活動をシミュレートするものである。
このカードをプレイすると、南軍プレイヤーは北軍の手札を見ることができる上、シェナンドア渓谷における防御において、ダイスに-1の修整をおこなうことができる。

Blue vs Gray - "La Belle Rebelle"

カードのタイトル「La Belle Rebelle」は、フランス人の従軍記者がボイドに付けたあだ名だそうだ(参考Web)。
おそらくはフランス語で「反逆者のベル」というような意味で、「ラベル・ルベル」とでも発音して韻を踏んでいるのだろう(面倒なので詳しくは調べていない)。

余談だが、Blue vs Grayでは、戦闘のダイスがより大きいことが、攻撃側にとってよりよいことだとは限らない。
例えば、修整後のダイスが3なら勝ちだが、4なら負け、ということがある。
それ故、このカードを使ったからといって必ずしもよりよい結果になるとは限らないのではないかと思う。
「La Belle Rebelle」は戦闘解決より前に使わなければならないカードだが、その他の「いつでも使えるカード」を、ダイスをふった直後に使ってよいかどうかを、相手プレイヤーと事前に調整しておいた方が良いかもしれないと思う。
そんな心配をするよりも、このゲームを対戦できるかどうか心配すべきだとは思うが(笑)。

「アメリカのジャンヌ・ダルクたち」のベル・ボイドに関する記述はほんの10ページほどである。
しかも、かなり字が大きい(おかげで読みやすかった(笑))。
この本が人にお勧めできるものであるかと聞かれると、ちょっと迷う。
とはいえ、僕がこの本を読んで、先に書いたようなくだらないけど楽しい思索を続けることができたことは確かである。

もし立ち読みできる機会を持つことができたなら、手にとってみてはどうかと思う。
by gameape | 2007-10-31 00:40